天上の虹の感想(詳細)

1回目読んで、里中さんの推理面白いわーと思ってたんだけど、2回目読んだらいくつか引っかかるー。
結果しか知らない状況で、「理由」を考えなきゃならないときに、どう説得力を持たすか、がとくにこの時代を題材とした作品の、難しいところであるとは思うのですが

・氷高皇女(のちの元正天皇)を生涯独身にしとくための理由付け。
新田部皇子との恋愛があったけど新田部が氷高を藤原氏に利用させないために別れを選んだ。というのが天上の虹における、氷高皇女が生涯独身の理由になったわけですけど、ちょっと利由が弱くないですかー・・・。
氷高を守る方法が弱い。新田部が氷高を真剣に好きだ、というのは前の巻まではわからなかったわけですが、真剣に好きだというのが今回わかった。だからよけいに別れること=守ることってのがわからない。だって新田部がダメでも他の手使って利用される可能性があるんじゃないか。とか。別れなかったら利用されるのは確実だったろうけど、だからって別れたから利用されない、とは限らない。
それとも、新田部的にはかなり氷高の気持ちを掴んでいて、自分と結婚しなければ「生涯独身で」とか言うだろうと踏んでいたんだろうか?踏んでたから別れを切り出したのかなー。
とにかく今の状況だと生んだ子が絶対に利用される、って思うから別れただけで、その先のこと考えてなかったんじゃないのかなーとかさー。
まあでも「今結婚しないことにした」となると、吉備のことも気にしてたし、吉備を早く長屋の元に嫁がせたかったってのがあって、独身のまま生きる宣言をしちゃったのかしらとも思わなくもないけど。(それを見越してたら新田部すごいけどな)

長岡良子不比等ファンなので、氷高は不比等に恋をしたため、生涯独身。という話にしてましたが。この時代、皇族の子女はことごとく結婚してるのに、してない!ってのについて、理由を考えるのは難しいね。でも別に今の世の中とおなじよーに、したくなかったからしなかった。というわけにはいかないのかな?っていかないんだろーけど。

里中さんが新田部をもってきたのは年と身分の問題もあるだろうけど、現在の唐招提寺の場所という、平城宮の中でも一等地!に館を持っていられたことへの理由付けとしてはばっちりだけどねー(まあそれだけじゃなくて天武の最後の皇子だったとか、藤原氏との関係とか考慮すると理由なんていろいろつけられるんだけど。でもまあ氷高の時代にいい目を見てる理由、にもなるかもね(笑))


古事記日本書紀の編纂と大津皇子の子供。
これ面白いよね!!(笑)持統天皇へ仇討ちを、史書を編纂するという形でする、ってのは確かにすごいよ。だって後世の人って日本書紀の印象で、「大津は殺されて可哀想。殺した持統天皇は酷い女」って印象を持ったわけでしょう?それで、ずーっと持統天皇は怖い女、酷い女とされてきたわけでしょう?そういうものに携わったのが、大津の子供だった!とかいうのは本当に面白いと思います。
それよりも引っかかるのはアマメがどうやって育ててきたかということ。岐阜(だったよな?)の多品治が何でアマメの言うことを信じて、大津皇子の子供だと思い込んで協力してくれたんだろう?顔が似てたからかなー?天上の虹では大津は大海人似だから、多品治が納得しちゃったのかなああ?多品治は安麻呂が上皇に復讐しようとしてること知ってるのかなー?
とかとか・・・このへんも色々ひっかかりますな。

・キトラと高松塚
弓削が葬られたのが高松塚かどうかはわかりませんけど、キトラが紀なのは間違いないことがわかりましたー。弓削は、讃良の言い方でなんとなく
キトラといえば余談ですが天上画以外壁画全部剥ぎ取りましたね。
キトラは壮年の男性が被葬者という報道がされてますが、正直そのへんわからないっぽいので、紀説もありだと思います。